先に結論から

LTV(Loan to Value)は「ローン残高 ÷ 不動産の時価」で計算する借入比率です。高いほど資産価値に対して借入が重く、借換え・追加融資・価格下落への耐性に効いてきます。

不動産と借入の話には必ずこの三文字が出てくる。銀行の担当者も、物件資料も、当然のように「LTV」と言う。定義は引き算と割り算だけの単純な比率だが、この一つの数字が、借りられるか・借り換えられるか・下落に耐えられるかという別々の問いに同時に効いてくる。

当てはまる人

収益不動産や住宅ローンを抱えていて、自分の借入比率を一度も計算したことがない人

銀行や物件資料で LTV という言葉に出会い、目安感を持ちたい人

当てはまらない人

物件単体とポートフォリオ全体の LTV を分けて把握し、定期的に更新している人

不動産をこれから初めて学ぶ人(まず個人のバランスシートから)

定義 — 分子はローン残高、分母は「時価」

LTV の定義

LTV は、不動産の現在価値に対して借入がどれだけ重いかを示す比率。分母が「買った値段」ではなく「今の時価」である点が肝になる。

LTV = ローン残高 ÷ 不動産時価 × 100

例:時価 5,000万円・ローン残高 3,500万円 → LTV 70%

分母が時価であることには意味がある。物件価格が下がれば、ローンを一円も追加で借りていなくても LTV は上がる。つまり LTV は自分の返済実績だけでなく、市場の側からも動かされる数字だ。購入時に「頭金2割だから LTV 80%」で始まった物件が、価格下落で 90% になることも、繰上返済と価格上昇で 60% に下がることもある。

LTVが高いと、何が起きるか

LTV が高い状態は、それ自体が直ちに問題というわけではない。効いてくるのは次の三つの場面だ。

第一に借換え。借換え先の銀行は担保余力を見るため、LTV が高い物件は条件交渉の材料が乏しくなる。第二に追加融資。保有物件全体の LTV が高いと、次の物件の融資判断で「すでに借入が重い」と読まれやすい。第三に価格下落への耐性。LTV 90% の物件は 10% の価格下落で担保割れ(残債が時価を上回る状態)に達するが、LTV 60% なら 40% の下落まで余地がある。

低め
〜60%
借換え・追加融資の選択肢を保ちやすい。価格下落への余地も大きい。
中間
60〜75%
投資用では一般的な水準。金利上昇・価格下落が重なると圧迫されうる。
高め
75%〜
担保余力が薄く、借換えや追加融資の交渉が難しくなりやすい。

ここに示した区分はあくまで大づかみの目安で、金融機関・物件種別・時期によって線の引かれ方は異なる。同じ 70% でも、都心の区分と地方の一棟では読まれ方が違う。

物件単体と、ポートフォリオ全体

LTV には二つの粒度がある。物件ごとの LTV と、保有不動産全体をまとめたポートフォリオ LTV(全ローン残高 ÷ 全不動産時価)だ。銀行が融資判断で見るのは後者を含めた全体像で、銀行担当者の目は物件単体の良し悪しだけでは動かない。

田中家サンプル(45歳・共働き)で見ると、自宅(時価6,500万・住宅ローン残3,800万)と投資用不動産(時価2,300万・ローン残2,000万)を合わせた不動産 8,800万に対し、不動産関連の借入は 5,800万。ポートフォリオ LTV は約66%になる。物件単体では投資用が約87%と高めで、自宅の余力が全体をならしている——という構造まで見えて、はじめて「借入が重いのか」に答えられる。

注意点

本頁の水準区分は一般的な目安であり、融資の可否や条件を保証するものではない。金融機関ごとに担保評価の方法(時価・積算・収益還元)は異なり、同じ物件でも評価額自体が変わる。

時価は査定方法によって幅のある概算値で、実際の売却額とは異なる場合がある。特定の借入水準を推奨するものではない。

自分の LTV は、資産と負債を一枚に並べると見えてきます。