先に結論から

不動産の手残り(FCF)は、家賃収入から運営経費・ローン返済・税を引いて最終的に手元に残る現金です。表面利回りには映らない「実際に使える金額」で、マイナスなら毎月の補填(持ち出し)を意味します。

表面利回りは「年間賃料 ÷ 物件価格」——つまり入口の数字だけでできている。そこから管理費が引かれ、固定資産税が引かれ、ローンの元利が引かれ、税金が引かれる。全部が通り過ぎた後に残ったものだけが、家計にとっての現実だ。3指標で判断するの中で最も生活実感に近い指標が、この手残りになる。

当てはまる人

収益物件を持っていて、実際の手残りを月単位で把握していない人

「利回りは良いのにお金が残らない」の構造を知りたい人

当てはまらない人

物件別の手残りと世帯全体の余剰を分けて毎月把握している人

物件の収益計算をこれから初めて学ぶ人(まずDSCRから)

物件単体の手残り — 一つの見方

物件単体の手残り(概算の一つの見方)

手残りの計算に唯一の公式はないが、物件単体で概算するなら次の形が出発点になる。何を経費に含めるかで数字は変わるため、自分がどの範囲で計算しているかを意識することが式そのものより重要になる。

手残り ≒ 家賃収入 −(管理費 + 固定資産税 + 修繕・保険)− 元利返済 − 税

プラスなら持ち出しなし、マイナスなら毎月の補填が必要。

注意したいのは帳簿と現金のずれだ。減価償却は帳簿上の費用だが現金は出ていかない。逆に元本返済は現金が出ていくのに帳簿上の費用にならない。「確定申告では赤字なのに現金は残る」「黒字なのに通帳が減る」という現象はここから生まれる。手残りを見るときは、あくまで現金の動きを追う。

もう一層 — 世帯全体の余力

物件単体の手残りがプラスでも、話はそこで終わらない。銀行が融資審査で最終的に見るのは、物件一つの収支ではなく、給与収入・他物件・生活費・教育費まで含めた世帯全体で、ストレスがかかっても回るかという一段上の問いだ。同じ「FCF」という言葉が、物件単体の手残りを指すことも、この世帯全体の余力を指すこともあり、文脈で中身が変わる。

二層で見る

物件単体の手残り=その物件が自力で回っているか。世帯全体の余力=空室や金利上昇が重なっても家計ごと持ち切れるか。前者がプラスでも後者が薄いことはあり、逆もある。二層を分けて見ることが、この指標の実務的な使い方になる。

手残りがマイナスの物件を保有し続ける判断も、世帯全体の余力しだいで意味が変わる。含み益や立地を理由に一時的な持ち出しを許容できる家計もあれば、その持ち出しが教育費のピークと重なって家計全体を圧迫する場合もある。物件の数字と家計の数字を同じ一枚で見る——持ち切る設計につながる視点だ。

注意点

手残り(FCF)の定義は、目的(自分の家計把握・物件比較・金融機関の審査)によって含める費用の範囲が異なり、単一の正式な式があるわけではない。本頁の式は概算の考え方を示すもの。

税額は個々の事情(所得・償却・法人/個人の別)で大きく変わるため、正確な計算は専門家の確認を要する。特定の物件の購入・保有・売却を推奨するものではない。

物件の数字と家計の数字は、一枚に並べてはじめて繋がります。