なぜ表面利回りだけでは判断できないか
「表面利回り8%」の物件があります。これは良い物件でしょうか。答えは「情報が足りないので判断できない」です。
表面利回りは年間賃料 ÷ 物件価格の計算式で求められます。管理費・修繕費・ローン返済・固定資産税・空室リスクを一切考慮していない数字です。
- 表面利回り8%でも、ローン返済後の手残りがマイナスになる物件は存在する
- 表面利回り5%でも、借入条件・管理費率・稼働率次第で健全な物件になる
- 同じ表面利回りでも、LTVが高いと金利上昇リスクで破綻することがある
原則
投資用不動産の判断に必要なのは「買えるか」ではなく「持ち切れるか」「増やせるか」「家族全体で耐えられるか」の3問です。
3つの核心指標
WAM Proが物件評価に使う核心指標は3つです。これを理解すれば、不動産業者の説明に惑わされなくなります。
① LTV(Loan To Value)— 借入比率
計算式
LTV = ローン残高 ÷ 不動産時価 × 100
例:不動産時価 ¥100M・ローン残高 ¥70M → LTV = 70%
LTVは「不動産の現在価値に対して、どれだけ借入しているか」を示す指標です。銀行が最も重視する指標の一つでもあります。
安全圏
〜60%
借換え・追加融資ともに対応しやすい。物件価格が下落しても余裕がある。
要注意
60〜75%
一般的な水準。ただし金利上昇・価格下落で一気に圧迫される可能性がある。
高リスク
75%〜
借換えが困難になるリスク。新規融資を断られる可能性が高くなる。
② DSCR(Debt Service Coverage Ratio)— 返済余力
計算式
DSCR = 月額賃料 ÷(月次返済額 + 固定資産税月額)
例:月次賃料 ¥500K・月次返済 ¥350K・固定資産税月額 ¥20K → DSCR = 1.35
DSCRは「賃料収入が、ローン返済をどれだけ上回っているか」を示す指標です。1.0を下回ると、賃料だけでは返済できない状態です。
健全
1.25以上
WAM Proの目標水準。空室や修繕が発生しても返済に余裕がある。
注意
1.10〜1.25
空室が続くと厳しくなる。管理体制の強化が必要。
危険
1.10未満
少しの変化で赤字に転落。出口戦略の検討が必要。
③ FCF(Free Cash Flow)— 手残りキャッシュフロー
計算式
FCF = 月次賃料 − ローン返済 − 管理費 − 固定資産税月額 − 修繕積立
FCFがプラスであれば「持ち出しなし」。マイナスなら毎月補填が必要。
最終的に手元に残るお金がFCFです。表面利回りでは見えないこの数字こそが、物件の実力を表しています。
バランスシートで不動産を見る
個別物件の指標だけでなく、自分のバランスシート全体でどう変わるかを見ることが重要です。
| 指標 | 物件追加前 | 物件追加後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 総資産 | ¥878M | ¥956M | +¥78M |
| ローン残高 | ¥423M | ¥484M | +¥61M |
| 純資産 | ¥532M | ¥549M | +¥17M |
| 月次CF | ¥1.42M | ¥1.56M | +¥0.14M |
| 加重DSCR | 1.43 | 1.37 | −0.06 |
| 平均LTV | 62.2% | 65.8% | +3.6pt |
この例では、物件を追加することで月次CFは改善しますが、DSCRが低下し、LTVが上昇します。「月次CFが増えるから良い物件」だけでは判断できない理由がここにあります。
銀行目線で自分を評価する
融資審査では、銀行は以下を見ています。自分の状況を銀行目線で把握することが、借入余力の正確な把握につながります。
- 返済比率 — 年収に対する全ローン返済額の割合(35%以下が目安)
- ポートフォリオLTV — 保有物件全体の借入比率
- 加重DSCR — 全物件の返済余力の加重平均
- 流動性 — 緊急時に動かせる現金・金融資産の月数分
- 確定申告書 — 不動産所得・給与所得・事業所得の安定性
WAM Proの実績値(2026年4月時点)
不動産10物件・LTV 62.2%・加重DSCR 1.43・稼働率96.8%・月次CF ¥1.42M。この状態を維持しながら、次の物件余力を継続的に試算しています。