先に結論から
DSCR(Debt Service Coverage Ratio)は「年間NOI(賃料収入から運営費用を引いた純収益)÷ 年間元利返済額」で計算する返済余力の指標です。1.0を下回ると、物件の収益だけでは返済を賄えない状態を意味します。
LTV が「借入の重さ」を測るのに対し、DSCR は「毎月の返済を収益で回せているか」を測る。ストックとフロー、両方が揃ってはじめて物件の健全性が見える。銀行が融資審査で必ず確かめる数字でもある。
当てはまる人
収益物件を持っていて、返済余力を賃料と返済額の比較だけで見てきた人
「DSCR が 1 を下回る」という表現の意味を正確に知りたい人
当てはまらない人
NOI ベースの DSCR を物件ごと・保有全体の両方で把握している人
不動産の借入をこれから初めて学ぶ人(まずLTVから)
定義 — 分子は賃料ではなく NOI
DSCR の定義
分子は賃料そのものではなく、賃料から運営費用(管理費・固定資産税・修繕費など。ローン返済は含めない)を引いた純収益=NOI。ここを賃料のままにすると、余力は実際より大きく見える。
DSCR = NOI ÷ 年間元利返済額
NOI = 年間賃料収入 − 年間運営費用
1.0 = 純収益と返済がちょうど同額。下回れば、その物件は自力で返済を賄えていない。
簡易式との差 — 同じ物件が 1.2 にも 1.06 にも見える
実務では「月額賃料 ÷(月次返済額 + 固定資産税の月割)」という簡便な計算もよく使われる。手元の数字だけで素早く出せる利点はあるが、管理費や修繕費を引いていないため、本式より高めに出ることは知っておきたい。
どちらの式を使っているかを意識しないまま「DSCR 1.2 だから大丈夫」と結論すると、実態より楽観的な判断になる。銀行側は経費や空室を織り込んだ保守的な計算で見てくるため、自分の計算との間に差があること自体を知っておくのが実務的だ。
目安と、動き方
DSCR は静的な数字ではない。空室が一室出れば分子が下がり、変動金利が上がれば分母が増える。買った時点の DSCR ではなく、「空室率を1割見込んだら」「金利が1%上がったら」と動かして測ってはじめて、返済余力の実像になる。この区分も一般的な目安で、金融機関や物件種別により線の引かれ方は異なる。
注意点
NOI に含める費用の範囲は目的や金融機関によって異なり、本頁の計算例は概算の考え方を示すもの。融資の可否・条件を保証するものではなく、特定の投資判断を推奨するものでもない。
返済余力は、資産・負債・収支を一枚に並べると見えてきます。