先に結論から
教育費は子の年齢から時期が読める数少ない大型支出です。ピーク年を資産推移に重ねると、「資産の谷」が事前に見えてきます。
子どもがまだ小さいうちは、この一点だけを見て安心してしまいがちだ。だが本当に知りたいのは、今日の数字そのものより、この先その数字がどう動いていくかではないか。子どもの成長とともに、家計の支出は形を変えていく。とりわけ教育費は、ある時期に重なって膨らみ、そのあとまた落ち着くという一つの波を持っている。この波を先に知っているかどうかで、同じ今日の数字への構え方はまるで違ってくる。
当てはまる人
子どもがいて、今後の進学時期がおおよそ見えている人
今日の純資産は把握しているが、数年先の推移までは考えたことがない人
当てはまらない人
すでに教育費ピーク期のキャッシュフローを試算し、対策済みの人
子どもがおらず、教育費という支出の波が家計に存在しない人
なぜ見えないのか
個人にもバランスシート(B/S)があり、左側に持っているもの、右側に借りているものを置くと、その差が純資産になる——この考え方の基本は、個人にも、バランスシートがあるに譲る。ここで見たいのは、その純資産という数字に、もう一つの軸——時間——を重ねることだ。
個人版のB/Sは、たいてい「今」の一点を映す写真として使われる。だが家計の支出は、一年を通じて均等ではない。子どもが小さいうちは緩やかに増えていく支出が、学齢が上がるにつれて重なり始め、進学が集中する時期にひとつの山を作る。この時期、資産を積み上げる速度より支出の重なりの方が勝り、純資産の伸びが一時的に鈍る、あるいはわずかに凹む「谷」が生まれる。
これは家計が壊れた兆候ではない。子ども2人以上の家庭では、進学の時期が近いほど谷は深く短く、離れているほど谷は浅く長く伸びる、という構造の話だ。谷の形をあらかじめ知らずに今日の数字だけを見ていると、実際に谷へ差し掛かったときに「思ったより増えていない」という感覚だけが残ってしまう。
資産の谷を読む判断式
資産の谷とは、教育費ピーク期に年間余剰キャッシュフローがマイナス化し、純資産が一時的に伸び悩む、あるいはわずかに減る局面のこと。概算では、まず年間余剰CFの符号を見る。
年間余剰CF = 収入 −(生活費 + 返済 + 教育費)
田中家サンプルで、谷を先に地図にする
田中家(45歳・共働き・子ども2人)を例にとる。今日時点の純資産は、総資産9,760万円から負債5,980万円を引いた約3,800万円。この数字だけを見れば、家計は一見落ち着いて見える。
ここに時間軸を重ねると、子ども2人が進学期に入る10年後前後に、支出がもっとも重なる時期が来ることが分かる。この時期、純資産の伸びは緩やかになり、地図の上では小さな谷として現れる。谷を越えたあとは、教育費という支出の重なりが外れ、純資産は再び積み上がっていく。
大事なのは、谷の深さや時期を正確に言い当てることではない。谷が「いつか来る」ことをあらかじめ地図に描いておけば、実際にその時期に差し掛かったときに、慌てずに構えていられるということだ。
まず、自分の谷を見てみる
この地図は、教育費の貯め方や増やし方を教えるものではない。ただ、今日の一点だけでなく、この先のカーブがどう動くかを一枚に重ねて見る、というだけだ。それだけで、同じ今日の数字への構え方は変わってくる。
田中家サンプルで谷の形を先に覗いてみたい人は「田中家サンプルで見る」から。自分の家の谷がいつ、どのくらいの深さで来そうかを確かめたい人は、5分で個人BS診断から始められる。
注意点
教育費は進路(公立・私立・理系・文系・留学の有無など)により大きく変わり、この記事の試算は概算にすぎない。
特定の進路や借入方法を推奨するものではない。実際の家計判断は世帯ごとの状況に応じて検討してほしい。
自分の谷がいつ来そうかも、5分で輪郭が見えます。