先に結論から

40代で手元に残らない感覚が消えないのは、住宅ローンなど確定した負債と、教育費のようにこれから来る支出が別々に散らばり、一枚の全体像になっていないからです。

資産の側は、まだ見える。預金や投資信託の残高は、アプリを開けば一目で分かる。けれど負債の側は、住宅ローンは銀行、車のローンは信販会社、保険料は保険会社と、別々の窓口に散らばっている。おまけに、これから来る教育費のような支出は、そもそも契約書のある「負債」という形をしていないから、どの明細にも載らない。頭の中では漠然と重さを感じているのに、それを一枚に並べたものは、多くの家庭に存在しない。

これは、管理を怠っているからではない。負債の側だけをまとめて眺めるという発想そのものが、日常の中に出てくる機会がないだけだ。

当てはまる人

住宅ローンに加えて車のローン・保険料・この先の教育費まで、「背負っている全体」を一度も数字にしたことがない人

子どもの教育費がいつ・どのくらい重なってくるか、漠然としか掴めていない30〜40代の世帯

当てはまらない人

負債残高と将来の大きな支出を一覧にし、時間軸まで含めて把握できている人

住宅ローンや教育費など、まとまった負債・支出予定をそもそも持たない人

なぜ見えないのか

個人にもバランスシート(B/S)があり、左側に持っているもの、右側に借りているものを置くと、その差が純資産になる——この考え方の基本は、個人にも、バランスシートがあるに譲る。ここで見たいのは、右側、つまり負債の側だけだ。

右側は、実は二層でできている。一つは、契約が結ばれ、すでに残高が決まっている負債——住宅ローンや車のローン。もう一つは、まだ契約書はないが、将来ほぼ確実に出ていく支出——子どもの教育費のように、時間差で効いてくる重さだ。保険料のような毎月の支払いも、負債そのものではないが、この重さの一部として頭の片隅に居座っている。40代で住宅ローンを抱え、子どもがまだ小さい家庭ほど、この二層が重なって見えにくくなる。今の残高と、この先の支出が、頭の中で一緒くたになっているからだ。

負債側の見方(二層 + レバレッジ)

負債の側は二層で見る。第一層は契約済みで残高が決まっている負債(住宅ローン・車のローンなど)、第二層は契約書はないがほぼ確実に来る支出(教育費など)。第一層を束ねると、資産のどれだけを借入で支えているかが一つの比率になる。

レバレッジ = 負債合計 ÷ 資産合計

田中家サンプルで、右側だけを見てみる

田中家(45歳・共働き・子ども2人)を例にとると、負債は自宅の住宅ローン残高3,800万円、投資用ローン2,000万円、その他ローン180万円で、合計5,980万円。総資産9,760万円に対するレバレッジ(資産のうちどれだけを借入で支えているか)は、約61%になる。

田中家サンプル(負債の側だけ) (自宅・投資用・その他ローン/数値は丸め) 負債 合計 5,980万 自宅の住宅ローン 3,800万 投資用ローン 2,000万 その他ローン 180万 レバレッジ(負債 ÷ 総資産9,760万) 約61% 今の残高だけでなく、この先の山も重ねて見る 10年後前後 教育費の山 ※ 時期のみを示す概念図。金額・時期を断定するものではない。
負債の側だけを一枚にすると、今の残高(自宅・投資用・その他のローン)とレバレッジが数字になる。さらに時間軸を重ねると、10年後前後に来る教育費の山も視野に入ってくる。

この5,980万円という数字自体に、良い悪いはない。大事なのは、この数字が「今の残高」だけを映しているという点だ。子ども2人が大学期に入る10年後前後には、教育費の支出が山になって重なってくる。今の負債の地図に、この先の山を重ねて見ておくと、同じ5,980万円でも見え方が変わってくる。漠然と「そのうち大変になる」と感じているのと、「今の負債はこれだけ、この先にこういう山が来る」と分かっているのとでは、同じ現実でも、構えられる余地がまるで違う。

まず、右側だけを一枚にしてみる

負債の全体像を見ることは、借金を減らす方法を教えるものではない。むしろ、今どれだけ借りていて、この先何が控えているかを、恐れずに一枚にすることだ。それだけで、漠然とした不安は、輪郭のある数字に変わる。

自分の家の負債の側を確かめたい人は、5分で個人BS診断から。先に他の家庭の例を覗いてみたい人は、田中家サンプルで見るへ。

注意点

負債の合計額やレバレッジの水準そのものに、一律の良し悪しはない。適正な水準は収入・資産構成・家族の状況によって世帯ごとに異なる。

教育費の山は時期のイメージを示す概念図であり、金額・時期を断定するものではない。この一枚は概算把握のためのもので、借り換えや繰上返済などの助言ではない。

負債の側だけでも、5分で輪郭が見えます。