先に結論から
純資産は、預金・証券・保険・住宅などの資産合計から、ローンなどの負債合計を引いた数字です。残高を並べて引き算するだけなので、5分で確かめられます。
積立の設定を済ませ、口座から毎月自動で引き落とされていく。その通知を見るたびに、前に進んでいる手応えがある。この手応えは正しい。行動としては、確かに資産形成をしている。ただ、その行動が今どれだけの結果になっているかというと、途端に言葉が濁る。「たぶん、それなりには」——多くの人が、この「たぶん」のまま何年も過ごしている。
これは、いい加減にやっているからではない。積み立てるという行為は毎月目に入るのに、その積み重ねが今いくらの純資産になったかという結果は、誰も一枚にまとめて見せてくれないからだ。
当てはまる人
積立や投資はしているが、その結果を純資産という一つの数字で確かめたことがない人
口座残高の合計を「貯まっている額」だと思っている人(負債を引いた数字を見ていない)
当てはまらない人
純資産を定期的に計算し、記録・比較まで習慣になっている人
資産も負債もごく少なく、引き算するまでもなく全体が見えている人
なぜ「つもり」で止まってしまうのか
資産形成には、二つの顔がある。一つは「積み立てる」「投資する」という行為の顔。これはカレンダーに現れる。毎月の引き落とし、アプリに届く通知、増えていく口座の一つ。動いている実感があるから、ここは見えやすい。
もう一つは、その行為が積み上がった「結果」の顔だ。今この瞬間、持っているものから借りているものを引いて、正味でいくら残っているか——いわゆる純資産(資産から負債を引いた、正味の持ち分)だ。個人にもこの一枚があるという話は個人にも、バランスシートがあるに譲るが、大事なのは、行為の顔は毎月見えるのに、結果の顔は自分で一枚にしない限り姿を現さないという点だ。
「資産形成してるつもり」は、この行為の顔だけを見ている状態だと言っていい。積み立てているのは本当だ。けれど、それが結果としてどんな形になっているかを一度も数字にしていないと、手応えだけが先行して、実像が置き去りになる。
純資産の計算式
持っているもの(預金・証券・年金・住宅の時価・保険の返戻金)を左に、借りているもの(住宅ローン・車のローンなど)を右に並べ、左から右を引く。銀行口座の残高を全部足しても、負債を引かなければ純資産にはならない。
純資産 = 資産合計 − 負債合計
田中家サンプルで、5分の結果を見てみる
45歳・共働き・子ども2人の田中家を例に、この「結果の顔」を一枚にしてみる。自宅(時価)6,500万、投資用不動産2,300万、保険・年金600万、株式・投信・預金360万で、資産は合計9,760万。そこから自宅の住宅ローン、投資用ローン、その他ローンの合計5,980万を引くと、純資産は約3,800万になる。
この一枚を作るのに必要なのは、それぞれの残高を並べて引き算するだけ、時間にして5分ほどだ。5分で、「積み立てているつもり」が「純資産約3,800万という結果」に変わる。数字が良いか悪いかは、この際どちらでもいい。大事なのは、これまで「たぶん」で済ませていたものが、確かめられる一つの数字になる、ということだ。
一度この数字が出ると、次の問いが自然に立つ。負債は資産の何割を占めているのか(田中家では約61%)、資産はどこかに偏っていないか——「つもり」の中にいるうちは浮かびようのなかった問いだ。結果を数字にすることが、その入口になる。
まず、自分の5分をやってみる
この5分は、積立をやめさせるものでも、増やし方を教えるものでもない。今の行動が、結果としてどんな形になっているかを、一度だけ数字にして確かめるだけだ。それだけで、「つもり」は「わかっている」に変わる。
田中家サンプルの一枚を先に覗いてみたい人は「田中家サンプルで見る」から。自分の5分をやってみたい人は、5分で個人BS診断から始められる。
注意点
5分で出るのは概算の輪郭であり、投資助言や積立の見直し提案ではない。不動産や保険の評価額は仮の時価で、実際の売却額・解約返戻金とは異なる場合がある。
数字が想像より小さくても、それ自体が悪い結果とは限らない。負債を返しながら資産を持つ時期は、純資産が動きにくいのが普通で、大事なのは一度数字にして推移を確かめられる状態にすることだ。
「つもり」は、5分で「わかっている」に変わります。